畜産環境問題の克服

臭気問題の解決

 堆肥ともみ殻を混合して牛床にしています。これは、保水力がなく、家畜の敷料には適さないと言われているもみ殻を下に完熟たい肥を敷くことで、尿はもみ殻を通って堆肥に吸収され、分解・発酵され、堆肥に含まれる菌の働きで牛舎や堆肥の臭気を抑えています。

仔牛の鳴き声による騒音問題の解決 

 鳴き声対策は、生後 3日で子牛を親から離して強制離乳を実施しています。通常、親牛に付ける期間が長ければ長い程、親子を離したときに、親牛も子牛も鳴き声は激しくなります。 3日で離すために、親牛も子牛もほとんど鳴かないです。子牛は約 1 ケ月間、哺乳瓶で手やり給餌し、その後、自動哺乳機に移行しています。

ハエ問題の解決

ハエ対策については、薬品会社に相談し、薬品メーカーの技術者を農場に招き、効果的でかつ消毒の回数を減らす方法について指導を受け、ウジ対策をメインにした方法で、当初、年間約100万円かけてハエ対策を行っていたのが半額で収まり、高い効果も得ています。肥育の明和牧場でも、同じような対策を行っています。

経営、技術の特徴

周辺地域の耕種農家と資源循環型農業の実践

 多くの畜産農家が外国産の粗飼料を与える中で、弊社牧場は周辺の大規模水田農家と連携して収穫後の稲わら・麦稈と堆肥交換を行っています。

 稲わらの収集と個々の水田の地力に応じた量の堆肥を散布還元することにより、水田農家にとっては化学肥料に頼らない米作りで収量を挙げ、牧場にとっては粗飼料の確保、輸送コストの削減につながっています。この取組は双方がコスト削減、環境負荷の低減につながっています。

飼料自給率の向上によるコスト低減と規模拡大

 稲わら収取量の増加に合わせて繁殖牛を増頭し、肥育牛と繁殖牛に与える粗飼料は100%地元産で賄っています。

 また、混合飼料においては、独自開発した「おから」を乳酸発酵させた飼料を与えています。産業廃棄物処理業の中間処理業の許可を取得し、豆腐工場から無償調達した「おから」を配合飼料と混ぜて乳酸発酵させたものを粗飼料と混合して給与しています。

給餌は一般的に肥育牛は粗飼料と濃厚飼料を別に与えますが、弊社では大規模酪農経営の給餌方法を導入し、粗飼料と濃厚飼料を混ぜ合わせてTMR化(混合飼料)したものを生育ステージごとに混合割合を変えながらすべてのステージでオリジナル飼料を給与しています。このことにより、牛が飼料を偏って食べることによる体重や肉質のばらつきがなくなり、また、食べ残しによる飼料の廃棄もなくなっています。

また、従来は廃棄物として捨てられていた大量の「おから」を独自技術により飼料として活用する資源の利活用につなげています。

作業の効率化・省力化

牧場内の一連の作業はマニュアル化、数値化、機械化し、牛に携わる従業員(研修生含む)の経験値の差からくる、飼養管理への影響を少なくしています。

勘や経験値が重要視されがちな農業の業界で、それらに頼らず運営できるようにしています。人によって仕事を覚える速さ、素質、感覚などは違います。また、ヒューマンエラーは常々起こります。特に大規模経営においては、個人の能力頼み、感覚任せでは経営は不可能です。IoTや機械化により、仕事全体の効率を上げています。

クラウド牛群管理システム「Farmnote Cloud」導入による牛群の一元管理

スマホを活用して、その日すべき作業や治療の予定が把握でき、繁殖管理の一連の流れや、個体の状況が一目でわかるようにしています。クラウド上にまとまったデータがあるので、すべての従業員がデータを共有することができます。

IoTセンサーデバイス「Farmnote Color」の活用

起立困難検知機能により、牛を常に見張って異常を発見してくれるセンサーは頭数が多い中、見落とすというヒューマンエラーの回避につながっています。

哺乳ロボットの活用

子牛は牛の鳴き声による騒音対策として早期母子分離を行い、生後27日まで個別管理し、その後哺乳ロボットによる授乳を実施しています。これにより子牛個々の授乳量を把握でき、体調管理が可能になり事故率低下につなげています。

その他、可能な作業はほぼ機械化しています。

良質堆肥の生産

堆肥の処理は、ブロアーが両側にある堆肥舎で切り返し行うことで発酵は非常にうまくできます。ホイルローダーによる切り返しは塊ができやすいですが、塊もなく、白い放線菌が目立ち十分な発酵が確認できます。

アニマルウェルフェアに沿った飼養管理

弊社牧場では、EUで浸透しているアニマルウェルフェアに配慮した家畜私用の概念を取り入れています。

肥育牛には必要以上のビタミンA制御を行わない飼料設計にしてあります。通常はA5等級に仕上げるために肥育牛にはビタミンAを制御し、サシが入りやすくしますが、一方で牛はビタミンA不足に陥り病気にかかりやすくなります。弊社牧場では無理なビタミンAのコントロールは行わず、適切に栄養管理をしたオリジナルブレンドの飼料に加えて、牛本来の能力を発揮できる栄養管理を行って肉質の向上を図っています。そして肥育期間の重要な月例では月に一度の血液検査を実施し、牛の栄養状態を把握し健康管理を徹底しています。

繁殖から肥育の一貫飼育においては弊社牧場で生まれた子牛は生まれたところで一生を過ごし、同じ人に育てられます。長距離の移動や飼育舎の変更など、環境の変化によるストレスを抑えています。

繁殖牛のストレスは、牛同士の角の突きあいなど、流産につながる事故の原因にもなります。そこで、繁殖牛のストレスケアの一つとして、粗飼料をいつでも好きな量を食べることができるように、牛舎中央に餌を入れた大きなバスケットを設置しています。さらに、牛房には牛体へのマッサージ効果のある洗車機のようなブラシを設置し、妊娠牛のストレスケアを行っています。